石油加工製品が身のまわりにあふれる今、昭和の時代から平成にかけてこつこつと美しい手作りの和の竹竿をつくり続けてきた江戸、川口、鳩ヶ谷の和竿師たち。和竿師にとって、焼き印の文字や図柄は職人としての誇りであるとともに保証の印。ときには親方や弟子との絆を表わす大切なものだ。縦横わずか数mmから1~2cm四方止まりという小さな焼き印の文字たちは、天眼鏡越しに眺めてみれば十人十色。鼻筋の通った美男子から茶目っ気たっぷりのおかめ美人、中にはちょっとヨレヨレのご老体!?も。そして、どの顔にも背景には和竿師の歴史がある。ユニークな焼き印文字の数々が、これまで語られることのなかった和竿師たちの人間模様とドラマを鮮やかに浮かび上がらせる。代々の和竿師たちが使ってきた焼き印とそのグレード、隠されたドラマが本書で初めて明らかに。和竿ファンにとっては唯一となる焼き印の貴重な資料であるとともに、職人世界の日常を垣間見ることのできる「読むタイムマシーン」として読者を魅了するに違いありません。
著者:葛島一美